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オハイオ・パリ・ACDC・「2012年10月には」・2話 [旅(Travel)]

008・デイズイン「まるで刑務所」.JPG

○デイズインの周辺。「まるで刑務所」
○The surrounding of Days Inn. "It's like a prison."

オハイオ・パリ・ACDC・「2012年10月には」
2話「種」

◎そもそも私達の実用新案額、
「インボルダ」の話が持ち上がったのは、
と言うより小さな「種」が蒔かれたのは、
2012年もまだ新しい2月13日の日曜日だった。

その日の午前11時55分に家を出て、
大阪梅田まで行き、
乗り継いで淀屋橋の中央公会堂へ、
「KCF」を聴講に出かけた。

KCFとは「関西・クリエイター・フォーラム」の略で、
デザイン道場のつながりで案内メールが来ていた。

講義もそれぞれ役立ったが、
何よりも「インボルダ」を共同開発する事になる、
丸一興業が会場に硬質ミルダンの展示台を提供し、
自社ブースも会場に出していた事が良かった。

最初ナギはミルダンを、
絵を描く紙がわりに、
いわゆる「支持体」に出来ないか?
・・・と同社ブースにおられた、
田中社長に訊ねたのだ。

値段と材の特性をお訊きして名刺を頂き、
席に戻って他の講義を聴く内に、
ある発想が突然閃いた。
『折りたためる額が作れるんじゃないか?』

国外の展覧会に何度も、
自費で参加していたナギは、
「額」の費用で痛めつけられていた。
額そのもの購入費と、
とんでもなく高額な「輸送費」にだ。

海外への輸送は重量加算、
つまり「重さ」で値段が決まる。
加えて最も安い輸送手段であるEMSには、
厳しい「サイズ制限」もある。

軽く丈夫な硬質ダンボール「ミルダン」で、
「折りたためる額」を作れば・・・

この難題を一挙に解決できる!
画期的な製品が作れる!
これだ!

この日は繰り返すが2月13日、
ちょうど7ヶ月後の9月13日、
両者で無事「実用新案」を出願した。

005・シカゴからトレド「夜を切って飛ぶ」.JPG

○夜を切って飛ぶ
○The night flight as cutting the air.

・・・機は夜を切って飛ぶ。

「トレド」の発音は「トゥリード」に近い、
つまり「L(エル)」なのだ。
最初「トレド」つまり「R(アール)」で発音して、
案内所で通じなかった。

アメリカ国内線の細い機体は、
フェニックス(発音フィーニックス)行きで、
体験ずみだ。

「インボルダ」開発とKFR(絵)の入選が、
自分をこんなアメリカの田舎まで、
連れてきている。

世界は私達の認識できない、
つながりと進行でしっかりと動いていた。

客室乗務員の男性が陽気に、
「トゥリー┣゛ォォォ-!」と叫ぶ。
ここはアメリカなんだ・・・

「┣゛スン」という驚くほど下手クソな着陸で、
「トゥリード」に機は到着する。

タクシーを呼ぶカウンターで、
ギャラリーへのバスを訊ねるが、
タクシーしか手段がないと言う。
(後でホテルでも確かめたが本当だった。)

電話を無料で貸して頂けたのを幸い、
宿泊するホテルへ送迎依頼の電話を・・・

荷物を取る「前」に一度。

『取ってから電話。』と言われて、
取った「後」にもう一度。

・・・二度かけさせてもらった。

空港は見るからにアメリカの田舎の空港だ。
本当に迎えが来るか不安になる。

006・トレド「典型的な田舎の空港」.JPG

○トレド空港
○Toledo airport

自分の待つ位置がここで良いか不安になる頃、
白いバンが乱暴に空港に停車し、
やや額が後退しているがまだ若い、
「キース・ヘリング」に似た男性が、
「ハイ!」と挨拶し荷物を積んでくれる。

「デイズイン・トレド・エアポート」は、
名前の通り空港のすぐ側だ。

件の男性はアメリカ人らしく、
押しつけがましくはないが、
基本的に親切だ。
『俺は名古屋に行った事があるんだ。』

部屋は40ドル(3500円くらい)だから、
豪華ではないが広くて快適だ。
脱ぐだけ脱いでさっさと寝てしまう。

007・デイズイン「服を脱いで寝る」.JPG

○デイズイン部屋
○Days Inn room

朝6時から食べ放題の朝食を食べ、
50ドルのTCを両替をしてもらう。
タクシーは現金のみだからだ。

TC(トラベラーズ・チェック)の両替は、
「銀行の手数料分」と言って、
2ドル取られたがこれは妥当だろう。

TCにはこういう不便さがある。
運良くアメリカン・エキスプレスの両替所が、
近くにあれば良いが、
使えない所では本当に使えない。

加えて1ドル払って、
アリゾナのマシューへの手紙と、
投函してもらう事にする。
通常業務には無い仕事だが、
これも結局やってくれた。

日が昇りだし外の景色を見ると、
本当に殺風景だ。

『手違いでオハイオ州立刑務所に居ます。』
と書けばお読み頂いている皆さんも、
「へぇーっそうか!」と、
思われる事まちがいない。

午前9時にホテルの周辺を走る。
空港近辺だから走る所は十分にある。
大きなトレーラーが停まっている。

009・デイズイン「トレーラーが泊まっている」.JPG

○大きなトレーラー
○A big trailer

少なめに8本ダッシュをして、
レッグランジをする。
鉄条網の内側は空港だ。

010・デイズイン「走る所は沢山ある」.JPG

10時までに戻り、
食べ放題の「朝食」を、
「昼食」替わりに食べる。
土日は10時までが朝食だ。
この手で昼食の問題は解決した。

スカイプでハドソン・ギャラリー、
マシュー、モンシャーと電話を掛ける。
どこも電波が極端に悪いが、
何とかそれぞれ・・・

『作品は無事だ。』(ハドソンから)
『手紙を送った。』(マシュー留守電に)
『挨拶だけだ。来年NYに行く。』(モンシャーに)
・・・と用件だけ伝えたり伝えられたりする。

机で絵を描いたり日記を付けたりする内に、
目がピッタリ塞がれたような、
抗い難い眠気に押さえられる。

いわゆる時差ボケだ。
時差ボケでは寝てはいけないと言うが、
機内での眠りが不規則でもあり、
1時間だけ眠る事にする。

1時間後に起きるとまだ眠気が残っている。
いや「残る」という生やさしさではない。
「立ち上がれない」という次元だ。
何と立ち上がれたのが13時30分。

そこからパーティに出る準備をするが、
フラフラして中々進まない。
ようやく部屋を片付けて、
行く準備を整えたのが15時。

受付はクェート人男性に交替していた。
しかし親しみやすい感じなのは同じだ。
すぐにタクシーを呼んでくれる。
『日本には行った事がないけど、
クェートでは日本の友人がいるんだ。』

タクシーの料金を訊くと、
『ハッキリした料金は、
走らないと解らないけど、
今から来る運転手は高くは取らないよ。』
と請け合ってくれる。

しばらくしてやって来た運転手「トム」は、
控えめに言っても肥満体なのは明らかで、
歩くたびゼイゼイ息を吐いている。

ただし正直そうな感じは全身から出ていて、
『料金表で見るとそこまでは「32ドル」だな。』
とこれまた請け合ってくれる。

そんな「トム」の運転するタクシーが、
街に向けて快速で走り出した。

011・ハドソン「タクシートム」・510.jpg

○タクシー・ドライバー「トム」
○The taxi driver "Tom"

(つづく)

++++++++++++++++++++

デイズイン・トレドの職員の人達は、
みんな気持ち良い方ばかりでした。
単に仕事というだけでなく、
親切心みたいなものが全員にありました。

カタカナで「ホスピタリティ」という言葉がはやり、
日本の「おもてなし」も見直される昨今ですが、
人のために何かしてあげようという気持が、
技術を超えて根本である気がします。

次回は11月30日(金)に更新予定です。

では!
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オハイオ・パリ・ACDC・「2012年10月には」1話 [旅(Travel)]

001・伊丹「出発」.JPG

○伊丹空港
○Itami Airport

オハイオ・パリ・ACDC・「2012年10月には」
1話「落ちる」

◎2012年の10月には、
すでに狂ったような忙しさが、
バタンと音を立てて扉を開いていた。

実際には実用新案を取るために、
朝に三宮の「ひょうご産業活性化センター」や、
杭瀬の丸一興業に行き、
夜は「デザイン道場」のために、
天満の近畿経済産業局へ向かい、
1日2回4時間の話し合いをして、
しかも合間にサッカー場に出す「KSF」を描いたり、
神戸市・西区民センターの指導案を書いたりして、
東奔西走していた7月から、
扉は開き始めていたのかも知れない。

いや実際にはすでに年明けの・・・
・・・キリが無いからこの辺で止める。
見栄えのしない人生にも、
過去からの長い要因があり、
もの事の始まった本当の日時などは、
ハッキリと解らない用になったいるのだ。
いずれにせよ「扉は開いていた」。

その結果として実用新案を出願した9月13日の、
翌日14日に出願額「インボルダ」をサッカー場で公知
(特許や実用新案は「公知前」が原則)。

中身の絵「KSF」は9月8日、9日の、
「アニメフェア関西」出展中に描き進める。

9月21日に額を「ものづくり新撰」に応募。
10月1日にオハイオに同「インボルダ(額)」出荷。
(中身KFR(絵)はアリゾナから送ってもらった)
10月11日フランスに「インボルダ+KBP(絵)」出荷。

そして今日10月12日にオハイオに向け出発(自分)

・・・という風に開いた扉が空気を吸い込む勢いで、
ドンドン物事は進行していった。

常に貫いていたのは「落ちる」恐怖。
〆切を落とし「約束」を守れなくなる恐怖、
・・・だった。

社会的立場が弱いため、
「やる!」と約束した事が、
「落ちる」恐怖は凄まじいものがある。
「岩崎ナギならやる『だろう』」というだけで、
全ての計画が進んでいたからだ。

伊丹から飛んだJALはいつの間にか、
車輪を軋ませ成田に到着する。

すぐに国際線への「乗り継ぎ」。

002・羽田「出発前」.JPG

○成田空港
○Narita Airport

「ずーっと、ずーっっと歩いていった『端』ですよ。」
と日本人の係官が説明してくれた。
「77番搭乗口」は飛行場の最果てだ。

「最果て」に着くまでに、
AA(アメリカン・エアライン)の窓口に寄り、
「持病の痛風があるから、
通路側に席を替えて欲しい。」
と頼んだ。

理由は本当だ。
痛風は「ぜいたく病」ではなく、
「体質」によるものだそうだ。

普段はほとんど発症しないものの、
長時間、座り続けると「突然」、
予期せず理不尽な痛みに苦しむ事になる。

そのため自分は常に立っている。
トイレと夕食以外は立っている。
朝食と昼食も立って食べている。
動き続けないと呼吸できないサメのように。

だから「座る」という「異常事態」は、
確かに我慢すれば10時間以上でも、
耐えられない事は無かったが、
なるべくそうしたくは無かった。

有能そうな日本人男性の(あるいは日系人男性の)、
係官はテキパキと席を替えてくれる。
アメリカ系企業はこういう所は本当に良い。
「人権」に敏感なのだ良くも悪くも。
時には人権を理由に人が殺される位に。

機は日本発だから、
日本語を話す乗務員もいるし、
白人の乗務員も親切だったから、
何の不自由もなかった。

隣の中国系アメリカ人(だろう)の女の子が、
隣の隣の空席から
(ナギが本来座る席だったのかも知れない)、
毛布を取って貸してくれたので、
寒がりの自分でも震える事は無かった。
下はズボンの上からフリースを履き、
お腹には「貼るカイロ」だ。

時計を見て日本時間の22時丁度には、
眠りに就いた。
もっとも1時間おきに起きて、
機内を歩き回る事は忘れない。

日本時間で午前4時に、
機内に朝食が配られ始め、
起床する事にした。
6時間眠れば死ぬ事はあるまい。

顔を洗い機体後部の窓から見ると、
透明な陽光の下、
蛇行する川が見えている。

003・アメリカ上空「蛇行する川」.JPG

○蛇行する川が平野を貫いて流れている。
○The river runs meandering through fields.

バリンと気持が切り替わり、
突然元気になる。
なぜこの旅をしなくてはならないか、
唐突に理解出来たからだ。

10時間以上も狭い席に座り
(しかも1時間おきに起きて歩き回り)、
日付変更線をまたいで、
次の日が(時差で)また昨日であるような、
そんな苛酷な旅は、
年齢を重ねてからではもう無理だ。

どれほど勝機が少なくとも、
まだしも若さが残る内に、
挑戦せざるを得ないだろう。

年齢を経れば旅は、
ファーストクラスか少なくともビジネスクラス、
あるいは豪華客船ででも、
出かけるべきものであり、
エコノミークラスでは死にかねない。

私達は長い歴史の中で、
無謀な戦いが、
士気の高さのみによって、
形勢を逆転させた事例を、
多くはないが確かに目にしてきた。

高い士気を産み出す「大義」は、
これまたしばしば「勘違い」であり、
根拠も薄弱な場合が多いが、
効力を持つという点では「本質」だ。

ともかく「今は」元気が回復し、
激しく回る駆動機の音が、
体の底から響いていた。

いま機はシカゴ・オヘア空港に到着した。

004・シカゴ「オヘア空港」.JPG

○シカゴ・オヘア空港
○Chicago O'Hare International Airport

(つづく)

++++++++++++++++++++

バタバタしておりましたが、
ようやく「旅行記」が書けるようになりました。
長い間ご無沙汰しておりましたが、
またよろしくお願い致します。

次回は11月23日(金)に更新予定です。

では!
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佐渡のたらい舟・5話「大切な事のもろもろを」 [旅(Travel)]

021・「明け方の佐渡」・510.JPG

明け方の佐渡から去る
I left from Sado during dawn.

◎佐渡のたらい舟・5話「大切な事のもろもろを」◎

太陽が出る前に、
早朝出発した車内では、
宿のご主人も個人的な話をする。

脳溢血から記憶が悪くなり、
お客さんの電話番号が憶えられないので、
電話対応はいつも奥さんがしている事。
(これで初日の疑問が解けた)

その奥さんも2人の娘さんが、
それぞれ外国人と結婚したため、
心労でしばらく参っていた事。
(「今は大丈夫ですが・・・」)

「あと全然運動しないんですよ。」

車を降りてバス停に立ってからも、
バスが来るまでの間、
ご主人は一緒に待ってくれて、
話は続く。
(しゃべる速度はゆっくりだ)

大きな蛾が寄ってきて、
ナギの頭やご主人の帽子に留まる。
それを2人とも振り落とす。

「佐渡は自然が豊かなんですよ。
割に森が近いからこういうのも来ます。」
9月だが外気は冷えている。

「冬は寒いんじゃないですか?」
「寒いですよ!
だからスキーも出来ますよ。
私は指導員の資格はないけど、
(スキー検定)1級は持ってます。」

ナギは「2級」だ。
今度は冬に来ても良いかも知れない。

バスが来る。
「ありがとうございました!」
「お気を付けて!」
バスの扉が閉まる。

後は行きと逆順だ。

防寒のフリース上下を着て、
フェリー甲板で海景を描き、
写真を撮る。

021・船中写真・A・510.jpg

021・船中素描・A・510.jpg

021・船中写真・B・510.jpg

021・船中素描・B・510.jpg

新潟「港」から新潟「駅」へ、
新潟「駅」から新潟「空港」へ。

JALでは初日の景色と同じ、
山を割って流れる川を窓外に見る。
新潟の大地はやはり美しい。

021・神戸へ「複便の窓から・青い新潟」.JPG

『佐渡も広いですからねぇ!
皆さんクルクルーと回れると思われるけど、
そんな事もありません。』

奥さんが最初の電話予約の時に、
そう言ってくれた。

「本当にそうだったな!!!」
今は実感としてそう思う。

想像だけでは決してつかみ得ない、
大切な何かが掴めた。

その大切な事のもろもろを、
自分は文章では伝えられない。
代わりに素描を取り水彩を描いた。

体験が何かを反映したのか、
翌2012年「日本水彩100周年記念展」で、
佐渡のたらい舟「グッゲンハイムはみんなのために」は、
無事入選した。

完成プロ撮影「たらい舟」・510.jpg

「湯ノ沢旅館」と「たらい舟営業所」には、
お礼状を出した。

何と言っても「100周年」だから、
タテをヨコにしても見に行く事にした。

ブログを通じてお知り合いになった、
カズノコさん、匁さん、森下さんも、
一緒に見て下さる事になった。

さぁ次は「2012年・東京」だ!

(つづく)

+++++++++++++++++++++++++++

「佐渡のたらい舟」第5話です。
次回「最終回」です。
いつもお読み頂きありがとうございます。

次回は7月7日(土)更新予定です。
よろしくお願い致します。

では!
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佐渡のたらい舟・4話「あんちゃん画家かい?」 [旅(Travel)]

016・影法師のたらい船・510.JPG

影法師のたらい船
The silhouette of the bowl ship of Sado.

◎佐渡のたらい舟・4話「あんちゃん画家かい?」◎

木の葉をバラ撒いたように、
大量のたらい舟が、
海の上で輪を描いている。

自分も見学に来ておいて何だが、
よくこれだけ大勢の人が、
たらい舟に乗りに来るなと感心する。
バスは次から次へと入れ替わる。

自分は集中して絵を描く。
まずは写実的な絵を描き、
それから創造的な要素を加えて、
日本水彩の大作につなげる予定だ。

単調な「佐渡おけさ」が、
拡声器から繰り返し流れ続けている。
さぁ構図を決めていこう!

古タイヤのぶら下がった桟橋を、
右手前から左中央に導き、
今度は突堤を左から右、
S字構図を作った処で、
左右に「たらい舟」をバラ撒く。

01・デッサン完成「佐渡のたらい舟」・ハンコ有り・510.jpg

途中で一度だけ大休憩を入れ、
突堤で10本ダッシュを行い、
腕立て伏せをし、
カロリーメイトを昼食に食べる。

3時ごろ老練の船頭さん3人に、
「あんちゃん、ずっと描いているさけ見に来た。」
と声を掛けられる。

「『たらい舟』を描きに来たんですよ。」
「上手いこと描くなー、
あんちゃん画家かい?」
「そうです。」

ここでも肩書きを解りやすく、
「画家」にしておいて良かったと思う。
名刺をお渡しして記念撮影をする。

017・佐渡の女船頭さん3人・510.JPG

+The old lady captains asked me "Are you an artist?"+
+老練の船頭さん達は「あんちゃん画家かい?」と訊いた。+

引き続き午後4時過ぎまで描いて、
4時30分のバスに乗る。

020・バスの車窓から.JPG

途中の乗り換え「佐和田BS」で、
接続する金井方面とのバスの、
到着時間差はわずかに1分。

「乗り換えに1分しかありませんけど、
大丈夫ですか?」

運転手さんに確認すると、・・・

「俺ちょっと早目に来ているから大丈夫ですよ!
このまま行きましょう!」

・・・と力強く断言してくれる。
佐渡は人が優しい。

午後5時37分到着の、
午後5時38分乗り継ぎ発車・・・
の処を午後5時36分に到着し、
「2分」の余裕が生まれる。

「ありがとうございます!」

バス停では旅館のご主人が、
車を出して待っていてくれた。

夕食は前日の約束では、
「どんぶり」のはずだったが、
結局普段の膳から、
「さしみ」だけを抜いた、
しっかりしたものが出てくる。

020・550円の膳.JPG

中々これだけのものを550円では、
出せないと思う。

その晩はふすまだけで仕切られている隣に、
別の客が来てTV演歌に合わせて唄い、
かつタバコ臭いのが流れてくるが、
疲れでいつの間にか眠ってしまう。

次の日は朝3時30分に起きて、
「カロリーメイト」を食べ、
「いろはす」を飲み、
簡素な自前の朝食を済ませた。
4時25分に玄関に降りる。

ちゃんと玄関ではご主人が、
4時30分に車を出すため、
待っていてくれた。

「甘くなり過ぎましたが。」
奥さんがコーヒーを出してくれる。

普段は砂糖入りを飲まないが、
この時は流石にお礼を言って飲む。

奥さんが玄関で見送る中、
4時30分に車のドアを閉め、
まだ明けない街路に走り出した。

(つづく)

++++++++++++++++++++++++++++++

「佐渡のたらい舟」第4話です。
佐渡ではどこでも優しくして頂きました。

あっ!忘れてた。
昨日から上野の森美術館「日本の自然を描く展」で、
私、岩崎ナギの「21世紀回顧録・プレンティ西神中央」が展示されています。
7月7日までです。
ご高覧よろしくお願い致します。

森下さん「ナギ作品」写真・510.jpg

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

現在「ナギ作品」展示中!
「上野の森美術館」で7月7日まで。

Now my work on the show!
At "The Ueno Royal Museum", to Jul.7.

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

次回は7月2日(月)更新予定です。
よろしくお願い致します。

では!
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佐渡のたらい舟・3話「たらい舟はくるくる回る!」 [旅(Travel)]

010・漕ぐ船頭さんと太陽・510.jpg

佐渡のたらい舟を漕ぐ女船頭さん
The lady captain was rowing the bowl ship of Sado.

◎佐渡のたらい舟・3話「たらい舟はくるくる回る!」◎

カーテンを開くと池がある。
けっこう広い。
何だか鶴みたいなのも立っている。

009・翌朝の旅館の庭.JPG

明け方が朝に移り、
下の大広間で朝ご飯を食べる。

「うなぎの寝床」みたいに、
奥の深い旅館だったのだ。
薄明で見た「鶴」は、
鶴亀の「彫刻」だと判った。

夜「ゴボゴバ」いっていた池では、
鯉が泳いでいる。
山水の庭が本当に美しい。

おかみさんが領収書を、
盆に載せて持ってくる。
2泊「2.5食つき」で丁度1万円。

「0.5」の分は・・・

「明日の朝は午前4時50分のバスで、
フェリーに向かわなきゃ行けないので、
『素泊まり』でお願いします。」

「でも今日は早く帰ってくるんだったら、
『どんぶり』くらいは作りましょうか?」

「じゃあ2食つきと素泊まりの分、
9450円に『どんぶり分』を加えて、
キッカリ1万円でお願い出来ますか?」

「550円のドンブリですね。
解りました。」

・・・どんなドンブリなのか楽しみだ。

「たらい舟」の小木(おぎ)港までは、
直通のバスは無い。

金井から「佐和井バスステーション」へ、
同バスステーション(BSと略される)から、
小木港までの1時間の道中だ。

座ると眠る習慣は健在だ。
窓ガラスに時々頭をブツけながら、
いつの間にか海が見えている。
到着は午前8時05分。

「力屋観光」のガラス戸を開けるが、
まだ早過ぎたようだ。
船頭のおばさん達が、
「おはようございまーす!」
と言って出勤してくる。

眼鏡のおじさんが、
「8時半くらいからです。」
と教えてくれる。

待ち時間におばさんから、
情報収集する。

「観光用の『たらい舟』じゃなくて、
漁師さん達の『磯ねぎ』は、
どこでやっているんですか?」

「9月~11月は禁漁期間で、
今はやってないよ。」

「えー!」

そんな事を話している内に、
8時20分になったので、
発券所で券を買う。

桟橋を歩いてたらい舟に向かう途中、
「まだ早いですか?」
と船頭さんに訊く。

「いえもう準備できているから、
大丈夫です。」
結局その船頭さんが、
操船してくれる事になる。

鳥追笠を被っているので、
顔は隠れてよく見えないが、
声からするとまだ若いようだ。

「たらい舟は10人乗っても大丈夫。」
との事だが・・・

自分で漕ぐ段になって、
櫂を握るために「へさき」に立つと
(丸いからどこもが「へさき」だが)、
前のめりに海に落ちそうになる。

・・・船頭さんがTシャツを引っ張り、
転落防止に努める。

近づいて来た別の船の、
古参の船頭さんにカメラを渡し、
櫂を操る危なっかしい姿を、
撮影して頂く。

「いい写真が撮れた!」
満足そうに老船頭さんは頷く。
その写真はコレ。

014・ナギと佐渡のたらい船・510.jpg

「船に櫂を付けないで、
前のロープ(輪状で櫂が脱けないようになっている)に、
当てるようにして漕ぐんです。」

若い船頭さんが教えてくれるが、
くるくる回るばかりで進みはしない。

「体重を左右に移動しながら、
漕ぐんです。」
それでどうにか船は進み出す。

ただどうかすると左右の腕の力の違いから、
船の針路は傾きがちだ。

「どこから来られたんですか?」
「神戸です。」
「えー晴れて良かったですね!」

「この『たらい舟』の絵を描きに来たので、
ホント晴れて良かったですよ。
あっちの方で描いていて邪魔になりませんか?」

「全然大丈夫ですよ。
お昼頃になると、
観光バスのお客さんが、
大勢来られるから、
それを描かれると良いですよ。」

現在お客は自分1人だけだが、
本当に団体客は来るのか?

しかし絵を描く場所を探し、
船着き場をウロウロしていると、
果たして観光客を満載して、
バスが港に入ってきた。

(つづく)

++++++++++++++++++++++++++++++

「佐渡のたらい舟」第3話でした。
いつもお読み頂きありがとうございます。

昨日は西神中央から三宮までの地下鉄で、
スリ未遂みたいな事がありました。

電車の角に立ったまま、
壁に寄っかかって居眠りしていると、
大倉山駅からサンバイザーの帽子に、
薄青のデニム・シャツを着た、
どこにでもいそうなおばさんが、
乗ってきたんです。

特に混んでもいないのに、
いやに寄ってくるなと思いましたが、
扉付近だったので、
たまーにそういう人もいるな、
と思いまたウトウトしていました。

おばさんがペットボトルを「ペキパキ」と、
鳴らしているのが聞こえましたが、
普通の事と思い気にもせず、
浅い眠りで立っていました。

地下鉄は2駅で三宮に着き、
降りようとすると、
今回の写真のウエストバッグ横、
巾着状になっていて、
上の紐を引っ張って締める所から、
デジカメの袋がブラーんと垂れるんです。

上の写真にもあるように、
紐で縛ればカメラ袋(更にそれも紐に括り付けています)が、
自然状態で出てくる、
なんて事は無いんです。

中身はありましたが、
「スリ未遂」かな?と思い、
嫌な気持ちになりました。

全く証拠は無いんですが、
巾着の紐が弛んで、
カメラ袋が垂れ下がるなんてあり得ない。

本当に普通のおばさんで、
高価な服では無いけど、
極端に貧しい格好でもない。

背中向きで寄って来るんじゃなくて、
こちらに顔側を向けて、
かなり近い距離に寄って来る事に、
少し違和感を感じだけでした。

ともあれ被害がなくて良かったです。
車中での居眠りには注意したいと思います。

次回は6月29日(金)更新予定です。
よろしくお願い致します。

では!
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佐渡のたらい舟・2話「湯ノ沢旅館」 [旅(Travel)]

008・バスはどこだ?・510.jpg

バスはどこだ?
Where is the bus station?

◎佐渡のたらい舟・2話「湯ノ沢旅館」◎

2人連れの中年男性に訊くと、
「向こうですよ。」
と親切に連れて行ってくれる。

ギリギリに「相川行き」に飛び乗り、
いざ目的地「金井(かない)」へ!

金井は佐渡の中心部にあたり、
市役所などもある。

バスには地元の高校生もいるが、
全国的に均質化された、
今時のしゃべり方と服装だった。

20分ほどバスに乗り金井で降りる。
旅館に電話すると、
道が判りにくいので、
車を出してくれると言う。

待つ程もなく車が来て、
優しい感じの「おじさん」が、
車の中から降りて、
出迎えてくれる。

これにはやや意外に思う。
というのも旅館はいつ電話しても、
「おばさん」しか出なかったからだ。

てっきりこの旅館は、
おばさん一人で切り盛りしているとばかり、
思っていたのだがそうでもないらしい。
この疑問は最終日に明らかになった。

車は脇道に入り、
街灯のない、
暗い路地を疾走する。

けっこう距離がある。
これが歩きだったら、
かなり大変だっただろう。

旅館は奥まった所にある。
古めかしい旅館だ。
小さなネコが一匹逃げる。
「湯ノ沢旅館」と看板が出ている。

玄関を上がるとおばさんが出て来て、
「まあまあいらっしゃい!
お風呂にお入りになって。」

おじさんも唱和して、
「遠い所からお越しになったんだから、
まずお風呂に。」
と勧めてくれる。

これが日本の古くからの伝統だろう。
今の時代に聞くと、
「そんなに汗臭いのか?」
と思ってしまう。

狭く急な階段を昇り、
格子戸の戸を開き、
8畳ほどの和室に入る。

窓の外は真っ暗で何も見えない。
荷物を置いて風呂に行く。

扇状の小さなお風呂だけど、
ちゃんと温泉だ。
深さも深い。

部屋に戻ると食事が出ている。
ずいぶん安く泊まっているのだが、
その割にしっかりした料理だ。

明日は「たらい舟」だから、
朝一番の「6時46分」のバスに乗る。

それをお膳をしてくれていた、
おばさんに伝えると、
「じゃあ6時20分に車を出しましょう。」
と言ってくれる。

たらい舟を見てどうするのか?
と問われるので、
「絵を描くんです。」
と答える。

「じゃあ画家さん?」
「そうです。」

こんな時にはカタカナで肩書きを付けなくて、
本当に良かったと思う。
判りやすいのが一番だ。

夜は静かだ。
時々ゴボゴバという、
正体不明の音が聞こえるだけだ。

音の正体は朝が来て、
カーテンを開いた瞬間に判った。

(つづく)

++++++++++++++++++++++++++++++

「佐渡のたらい舟」第2話です。、
お読み頂いてありがとうございます。

バタバタと色々な方とお話しし、
精力的に絵を描いております。
成果の出る出ないは気にし過ぎず、
無駄を怖れる事なく挑戦して行きたいです。

次回は6月25日(月)更新予定です。
よろしくお願い致します。

では!
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佐渡のたらい舟・1話「バスはどこだ?」 [旅(Travel)]

003・晴れた新潟港.JPG

※注・この記事は2011年、備忘録に書き留めたものです※

◎佐渡のたらい舟・1話「バスはどこだ?」◎

佐渡に行くことにした。
「たらい舟」を取材に行くのだ。

「たらい舟」は「洗濯たらい」みたいな舟で、
磯から離れない「磯ねぎ漁」を行い、
「タコや魚、貝や海藻」を穫る。

それを来年100周年を迎える日本水彩の
「100周年記念展」に出し、
ぜひ入選したいと思ったのだ。

100年という節目の当落は、
世間的にはツマラナイ事だけれども、
同会に所属する人間にとっては、
やはり大事な事だ。

伊丹空港はドンヨリした曇りだ。
出発の日としてはパッとしない。

001・どんよりした伊丹空港.JPG

飛行中はずいぶん揺れる。
飲料などの配膳が中止される程だ。

見えていたドンヨリ雲を突っ切り、
ガタガタガタガタ揺れる機が、
パッと青い山の上空に出て、
揺れが収まる。

新潟の山々の青い美しさがしばらく目を打つ。
蛇行する川が山を割いている。

002・青い新潟.JPG

新潟空港に着くと12時15分。
佐渡に渡る新潟港への直通バスは無く、
まず400円払って「新潟駅」に出る。

新潟駅では南口に到着。
2階の連絡通路を通り抜け、
万代口(まんだいぐち)に出る。
今ちょうど13時。

「新潟港」行きのバスは5番から、
13時05分の発車だった。

バスの車掌さんは交差点に来る度に、
「停車します。左/右に曲がります。」と、
丁寧に案内する。
新潟では常時こうなのだろうか?
それとも観光客の多い路線だからだろうか?

バスは13時20分に港に着き、
16時のフェリー出港までは、
実に長い待ち時間になった。

「水彩画之栞(すいさいがのしおり)」の、
指導案を作りながら根気良く待つ。

15時20分くらいには、
乗船の列が出来はじめ、
曇り空も晴れ始める。
やはり晴れると気分も晴れる。

乗船前に案内所で、
「たらい舟」についてお訊きすると、
男性職員が実に丁寧に教えてくれて、
時刻表、地図、観光案内などを、
適宜手渡してくれる。

その説明によると・・・
漁師さんは確かに今でも、
「磯ねぎ漁」を続けているが、
見られるかどうかは「運」、
との事。

・・・ただし「観光用」の舟はある。

案内を聞いて乗船し、
甲板に陣取る。

個人で車無しだと、
2等は予約できず、
1等椅子(座る)か、
1等ジュータン(寝る)しか、
選択できないが、
いずれもナギには必要ない。

甲板に立ち海景の素描を行う。

甲板は高く、
船の煙突の突き出た影が水面に映っている。

004・海に映る影・510.jpg

柵も無いから落っこちやしないかと、
ヒヤヒヤする。

海風は立っている分には、
冷たくないのだが、
風を切って進む船では、
容赦なく体温を奪っていく。

フリース上下を着込む。
これが9月の終わりだからまだ良いが、
10月を過ぎたら甲板は寒すぎるだろう。
ギリギリの季節だった。

一心不乱に海景を描く。

004・波のスケッチ.jpg

2時間くらいはあっという間に過ぎ、
両津港がぼんやり見え出す。

「本船は両津管内に入りました。
あと30分ほどで到着します。」

船内放送が流れたのを機に、
素描を取るのを止め、
ただボンヤリ景色を眺める。

007・両津港「夜」.JPG

もう外は真っ暗だ。
港に降りて地上へ出るが、
バス停が判らない。

周りをしばらく歩いてもなお判らない。
旅館へ電話すると・・・

「とにかく相川行きを探して!
早くしないとバスが出ちゃうよ!」

・・・焦って地元の方らしい女性に、

「相川行きはどこですか?」
「ワタシも探しているけど判らない。」

・・・旅行者だったらしい。

(つづく)

++++++++++++++++++++++++++++++

今日から開始しました、
旅の備忘録「佐渡のたらい舟」、
毎週「金曜」毎になんとか連載できれば・・・
と思っています。
よろしくお願い致します。

次回は6月18日(月)更新予定です。

では!
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NY奮闘記2012・8話「前例無き前例を作る」 [旅(Travel)]

NY奮闘記2012・8話「前例無き前例を作る」

020・マンハッタン・昼・510.jpg

+マンハッタン、それでは!
+See you Manhattan!

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
JFKに着く頃に、
1日がようやく明け始める。

020・ザ・マンハッタン・510.jpg

020・JFK・510.jpg

+NYの夜明け
+Dawn at NY

マンハッタン島の碁盤目が、
光によって明確に示される。

午前7時前にJFK着。
すぐに手荷物案内に行き。
夜間に荷物が届いていないか、
確かめるもやはり無い。

荷物遅延の保険は、
高々250ドル(2万円弱)だから、
免税品店の高額商品は買えず、
かと言って「I LOVE NY!」みたいなのは、
コンリンザイ着ないだろうから必要ない。

要するに「使えない」金額なのだ。
多分そう設定されているのだろう。

次の上海行き(例によって乗り継ぎ便)の、
離陸時刻は15時35分。

ところが発券所に4時間前の、
11時45分に行ってみると、
すでに長蛇の列だ。

『いったい何時から受け付けてるんだ!?』
と驚かざるを得ない。

その上海便は定刻通りの出発。
隣の野球帽を被った女性が、
通路側の席まで足を放りだして、
熱心に窓外を眺めている。

「エクスキューズ・ミー・ミス?」
軽く注意を促すと、
こちらを振り向いて明るい声で、
堰を切ったようにしゃべり出す。

但し中国語なので一言も解らない、
『申し訳ないですけど、
中国語は解りません。』と言うと・・・

「オー・アイム・チャイニーズ」
と解ったようなそうでないような、
中間的な返事をする。

「アイム・ア・ジャパニーズ」
「オー・アイム・チャイニーズ!
ユアー・ジャパニーズ!」と、
嬉しそうにハシャいでいる。

この女性は「リリー」という、
とても陽気な女性だった。
旦那さんは肖像画家で、
自分自身も趣味で写真を撮るのだと言う。

そう前置きしてナギのカメラを借り、
眼下に見えるマンハッタンを数枚撮影してから、
「メール」で送って欲しいと頼んでくる。
(一番上の写真は「リリー」が撮った)

英語を勉強中との事で、
発音の可笑しい英語がポンポン出て、
基本的な人の良さも伝わってくる。

ナギは例によって席には殆ど座らず、
機体最後部の空いた場所で、
ひたすらこの旅行記を取り続ける。

余りにもずっと描いているので、
興味津々の搭乗員が、
中国語で『これは何か?』と訊いてくる。

「ダイアリー(日記)」と答えるが、
その女性搭乗員には解らないようで、
別の男性搭乗員が中国語で説明し、
納得したようだ。

更に別の男性搭乗員が覗き込んできて、
「アー・ユー・ジャパニーズ?」と驚く。

「イエス。」と答えると、
「わたしはニホンゴ解りません。」
と笑いを取ってくる。

全体に東方航空の従業員は、
なつっこい人が多く、
従業員同士でもわいわい喋りあっている。

良く言えば人当たりが明るく健康的、
悪く言えば田舎臭いが、
険のあるところは無く、
好感が持てる。

田舎臭いと言えば、
やはり行き同様トイレで隠れて、
タバコを吸う人がいて、
今度は警報が鳴り、
犯人(?)の若い中国人男性が、
若い中国人搭乗員に、
かなりの剣幕で怒られ出した。

中国語なので意味は解らないが、
両手を天に振り上げ、
『落ちたらドウするつもりなんだよ!えっ!』
と言ったようで(えっ!は実際に発音)・・・

・・・喫煙男は尾を垂れた犬のように、
スゴスゴと引き下がり、
その他は問題なく上海に着いた。

またラマダ空港ホテルで一泊。
朝イチに出て昼には日本・・・

・・・のはずが機体の不具合で、
午前11時離陸に変わった。

空港で待つ間に、
「5分で印鑑が彫れます。」
と日本語で掲げてあるのを発見。
人民元を使う事も少ないし、
「岩崎」と彫ってもらう事にする。

一番小さい石で「120元(約1500円)」。
本当に5分で彫ってくれて、
中々出来も良い。

彫ってもらう途中で、
日本人の若い男女が来て、
「SEAL」の表示を指さし・・・

「あれ『セール(SALE)』って、
綴りが間違ってない???
SALEだったSAELだった???」

・・・と大きな声で指摘してくる。
「SEAL」は「印鑑」という意味。
間違っていないし、
おじさんは中国語(母国語)も英語も日本語も解る。
日本人の教養は明日にも中国人に抜かれるだろう。

関空まではわずか2時間だ。
気温は+10度。
ニューヨークは-2度、
シラキュースは例外的に温かかったとは言え、
+5度だった訳だから、
母国がとても温かく感じる。

020・神戸・510.jpg

+神戸へ
+To Kobe.

失われた荷物は結局、
「バルバドス」に行っていた。
何とカリブ海周辺だそうだ。

保険の250ドルは、
「そごう」で紳士服を買い、
着ていった服をクリーニングするのに使った。
保険は下りたがまだ払い込まれてはいない。
交渉は結構長くかかった。

ヲウチギャラリーのWEBコンテストは、
結局2位だった。
個展は当初どおりの2013年9月のみだ。

今は確定申告の準備に追われている。
本当にギリギリ出す事になりそうだ。

そう言えば「リサ」は写真のお礼に、
中国の上空から撮ったらしい、
蛇行する川の写真を送ってきた。

021・リサ・ワン撮影「中国」・510.jpg

+たぶん中国???
+Maybe China???

この旅も忙しい旅だった。
1週間に6回飛行機に乗り、
荷物が無くなり、
そして返ってきた。

今日本は大震災から1年が経ち、
再出発を切ったばかりだ。

自分もこの旅で得た無形の力を咀嚼し、
更に大きく伸びたいと強く願う。

前例の無い事が打ち続く時代、
試さないで何が解るだろう?

得たものがあり、
失ったものがあるにしても、
前進を止める訳にはいかない。

未知の人生には、
生きる事によってしか、
「前例」を作る事ができないからだ。

(おわり)

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「NY奮闘記2012」お読み頂き、
ありがとうございました!
またご感想をお聴かせ頂ければ、
嬉しいです。

以前の記事の「リンク」は以下です。

1話「リンゴを囓りビックアップルに」
2話「牛肉と豚肉どちらが良いですか?」
3話「音速領域」
4話「キスの秘密」
5話「マルベリーを左に曲がれ」
6話「ロスト・バゲッジ!」
7話「ジョブス追悼展」

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次回は3月19日(月)に、
更新予定です。
改めてよろしくお願い致します。

では!
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NY奮闘記2012・6話「ロスト・バゲッジ!」 [旅(Travel)]

018・行きSQ・00884.jpg

JFKへ。
To JFK.


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

交差点を渡り終え、
写真でも撮ろうかと鞄を置くと、
「バスに乗るんですか?」
と黒人青年に訊かれる。

「そうです。」と答えると、
前日の発券所を指さし、
「あそこに行って下さい。」
と言ってくれる。

発券所前にも黒人のおじさんが、
2人立っていて、
「どこに行くんだ?」
「券は持ってるか?」
とそれぞれ訊く。

券を示しながら、
”To JFK.”
と伝えると・・・

・・・「こっちだ。」
と初日と同じシャトルバスまで、
連れて行ってくれる。

乗ると白人の女の子と、
ナギとで2人しかいないが、
即座にバスは発車する。
時刻は朝5時30分。

道が早朝で空いているから、
6時にターミナル4で女の子を降ろし、
ナギのターミナル5には6時10分に着く。

空港は人でゴッタ返している。
朝早い便にここまで需要があるなら、
航空会社も嬉しいだろう。

ジェット・ブルーは人対人ではなく、
発券機に顧客情報を、
入力して行かなくてはならない。

当然英語表示なので、
3度くらい係のおじさんに訊きながら、
発券を完了する。

手荷物を預けるのも、
受付から自動的に、
吸い込まれる形式ではなく、
自分でベルトコンベアまで、
持って行かなければならない。

それが解っておらず、
置きっぱなしにしてしまい、
係の女性がベルトコンベアまで、
持って行ってくれた
(それが伏線だったかも知れない)。

018・行きSQ・00889.JPG

018・行きSQ・00893.JPG

天気は素晴らしい、
わずか1時間ちょっとの飛行だが、
マンハッタン島の整然とした区画が、
次には森が、
最後には雪の集落が間近に見え、
機はシラキューズに到着する。

キャッシーに電話すると15分ほどで、
空港に迎えに来られると言う。
『荷物を待っている所なんだ。』

・・・ところがその荷物が、
中々出て来ない。

『ここまで遅いのは初めてだな・・・』
と思う内についにベルトコンベアが、
完全に停止してしまう!

「えええ!!!」
白人の眼鏡の係官が出てくる。

『どうかしましたか?』
『荷物が無くなったんです!』
混乱して手を振り回しながら言う。

別室に連れて行かれ、
紙に必要事項を記入し、
『あったらスグ電話しますよ。』
と言ってもらって部屋から出る。

キャッシーはもうとっくに着いている。
フェイスブックの友人なので、
実際に会うのはこれが初めてだ。

一通り「ナイス・トゥー・ミーチュー!」
と言い合った後で、
『鞄が無くなったんだ。』
と言うととても驚く。

『係員には言った?』
『手続きは済ませたよ。』

停車場まで歩くと、
酷使に耐えた車が、
実際的に駐車場に泊まっている。

車は雪の残る道を走り出す。
『普段は何メーターも積もるほど、
雪はよく降るのよ。
今年は異常気象ね。』

本当にとても温かい日だ。
少し窓を開けて走る。
空港ホテルはすぐそこだ。

018・行きSQ・00894.JPG

荷物だけを置いて、
「スティーブ・ジョブス追悼展」の、
様子を見るためにテックガーデンに出かけた。

(7話につづく)


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次回は3月5日(月)に、
更新予定です。

では!
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NY奮闘記2012・5話「マルベリーを左に曲がれ」 [旅(Travel)]

017・帰りブルックリン・00879.JPG

「B線」再び。
"B line" again.


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
パーティーは盛り上がったまま進み、
スキンヘッドの白人男性が、
赤毛の黒人女性に、
求婚する一幕もあった。

016・ヲウチ・「プロポーズ」00874・510.jpg

盛会だが、
次の日はシラキューズに行く日で、
朝の5時に宿を発たないと駄目だ。

スキンヘッドのジェリーと、
名刺を交換し、
その他の方々とも名刺を交換して、
途中でパーティーを出る事にする。

016・ヲウチ・「人混み・2」00878.・510.jpg

参加者の中には、
アメリカ人の原子力技術者で、
福島に来て下さった方もおられて、
熱い握手をして別れた。
これが8時半頃。

B線でブルックリンを出て、
「ブリーカー・ストリート」まで戻る。

行きと単純な逆順では無い。
大きな違いは一旦地上に出て、
「緑6番・アップタウン方面」に、
乗り換えなくてはならない事だ。

何でこんな造りなのかは解らないけれど、
不便な事は言うまでもない。

しかも駅の発券所の、
従業員の態度が異常に悪い。

黒人男性と黒人女性の、
2人組だが・・・

・・・最初は黒人男性に訊くも、
2人でベチャベチャ喋っていて、
長い間まったく無視。

何度もしつこく訊くと、
『コッチに訊け!』
とでも言うように苛立たしく、
隣の黒人女性を指さす。

但し実際に言葉としては発声せず、
指さしたのは今まさに喋っている、
黒人女性なのだ。

仕方がないので、
今度は黒人女性に訊ねると、
プラスチックの箱の中から、
一部分を乱暴に『バン!!』と叩く。
そこには・・・

『この出口を出て左に曲がり、
マルベリー通りを更に左に曲がれ。』
と英語で記してある。

何度となく繰り返された質問だろうが、
2人とも自分達のおしゃべりに熱中して、
全く答える気もない。

もし逆にコチラがプラスチック箱を、
叩きでもしようものなら、
すぐ警察が飛んで来るから、
働く事もなく給与をもらっている。

日本でも京都で何十年に何日かだけ、
出勤して給与をもらっていた例があるが、
こんなのは人種差別でも地域差別でも、
何でもないから即座に解雇して欲しい。

怒りを覚えながら、
「マルベリー通り」を探すが、
これがまた見つからない。

通行人に計4度も訊くが、
全員「行き過ぎたね。逆方向だよ。」と、
同じ事を言われ4度行ったり来たりする。

その内にいつも行き過ぎていて、
標識も出ていない細い路地で、
ただ道路を挟んだ向かい側にだけ、
「マルベリー通り」と出ている、
目立たない路地を見つけた。

何でよりによってココなんだ???

015・ブルックリン橋・00857・510.jpg

ともかく96丁目まで帰り、
アパートに辿り着き、
食べ物を咀嚼している途中で、
またも倒れそうに眠い。

いつもこうだな!?

ベッドによじ上り、
肩が付いた瞬間に、
眠りの波にさらわれる。

朝は4時に起きて、
グランド・セントラルに向かった。

(6話につづく)



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次回は2月27日(月)に、
更新予定です。

では!
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