オハイオ・パリ・ACDC・「2012年10月には」・4話 [旅(Travel)]
○空港へ夜のドライブ
○The night drive to the airport
オハイオ・パリ・ACDC・「2012年10月には」
4話「イッツ・マイ・オナー、イッツ・マイ・プレジャー」
◎スコット夫妻と夕食を共にした翌日も、
朝4時には起床し、
6時キッカリに朝食を食べ、
8時からは空港周辺を走る。
昨日の雨はもう上がっている。
8時少し前に走り出したから、
8時丁度になるとトランペットが鳴り、
州軍の朝礼が始まる。
遠くの方に豆粒ほどのF16が、
並んで停まっているのが見えた。
アメリカの空間が遮られる事なく拡がり、
その中を走っていると肉体の苦しみと共に、
可能性の有機的な繋がりが、
拡がる空間と痛む肉体との間に、
確かに存在している事を、
知識ではなく走るという行為をもって体得し、
納得する事が出来た。
可能性を実現する信念は、
行動によって実体化していく。
何としてでもやり切らねばならない。
「デイズ・イン・トレド・エアポート」に戻り、
帰りの用意をリュックとキャリー・バッグに、
振り分けて詰め込んで、
9時20分から30分までの10分で、
食べ放題の朝食を「昼食」として再び食べ、
服を着直して受け付けまで走り・・・
「9時45分に空港行きのバスを予約しています。」
・・・と笑顔で挨拶する。
受付は極端に太った女性だ。
だが素晴らしい笑顔を見せるやいなや・・・
『空港に行っています。すぐ戻ります。』
・・・という案内板を受付に掲げる。
『エエ!この女性が運転するのか!!』
ナギは思わず驚く。
もちろんそうだ彼女こそ担当者だ。
車寄せに着けた彼女に・・・
「サンキュー!ハヴァ・グッデイ!」
「ユートゥー!」
・・・素敵な笑顔を残して、
サッと受付へと帰っていく。
エア・チケットの換券では、
相変わらず「痛風」の説明をし、
シカゴと成田までは、
「通路側」を取ってもらう。
「最後の東京-大阪間だけ窓側だけど、
東京で換えてもらえるかも知れない。」
「大丈夫、東京-大阪は1時間だけだから。」
鉛筆のようなアメリカン・イーグルの、
最後尾に座り窓の外を眺めていると・・・
(この飛行機は左1列、右2列。
つまり左側に座れば「通路側」であり、
「窓側」でもある。)
・・・黒人女性の客室乗務員が、
「漢字(チャイニーズ・キャラクター)」で、
名前を書いて欲しいと頼んでくる。
「私は中国人ではなく日本人です。」
「あらじゃあ日本語で書いて。」
カタカナで「エルジン」と、
コースターに書くと、
一応喜んではくれるが、
やはり漢字の方が良かったようだ。
女性をガッカリさせるのは、
避けたい所だ。
そこで「絵留人」とまるで、
「夜露死苦」と書く暴走族みたいに、
初日に食べたマクドナルドの包みに書いて、
降りがけに渡してあげる。
○客室乗務員の「エルジン」へ
○For a flight attendant "Elgin".
今度は心から喜んでくれる。
「ハヴァ・グッデイ!」
差別意識の強そうな白人女性が、
「ベリー・ファニー」と吐き捨てた。
・・・雨の中をスコット夫人が先導し、
近くのレストランまで食べに行く。
遠くから来た客を、
「ご馳走もせずに帰すのか!」
と怒る人は日本の田舎にもいるが、
スコット夫人もやはりそうだった。
スコットが「うっかり」ナギを帰した後、
夫人を始め周りの人が、
真剣に引き留めてくれのは、
やはり嬉しいものだった。
もちろん迎えに来ていたタクシー「トム」には謝る。
「気にするな。」トムは街を流しに帰って行く。
さてギャラリーを閉めて「レストランへ!」
・・・というキワに男女二人組が、
ギャラリーに入ってくる。
スコット夫人はこっそりと肩をすくめてみせる。
『お客さんはいつだって大事さ』と小声でナギ。
『ザッツ・ライト!』と夫妻。
二人が帰った後で、
生演奏が聴ける近所のレストランで、
スコット、夫人、ナギ、の3人で食事をする。
○ギャラリー近くのレストラン
○The restaurant near from the gallery
「じゃあナギ、講師っていうのは、
何の講師なの?」
「ドローイング(デッサン)です。」
「じゃあ、あなたは『フルタイム・アーチスト』なのね?」
「そうです。
でも『制作』は時間全体の25%で、
あとの75%は交渉や指導に追われています。」
「ギャラリー運営もそうよ。」
スコットは本来作家であり、
夫人は実質上の経営者だから、
三者とも深く納得する。
「景気は少しずつ良くなっているよ。」
とスコット。
アメリカはそうだろうが日本は・・・
「それでナギ、正直に訊きたいんだけど、
日本人はアメリカをどう思っているの?」
ついにこの質問が来る時代が来たか・・・
ナギはある種の感慨に打たれた。
ある人やある国が他者の評価を、
気にするようになった事は即ち、
良くも悪くもその力が衰えた事を意味する。
中国が他者、他国を気にせず、
横暴の限りを尽くしている事は、
今現在でも目にする事ができるし、
日本のバブル時代もそう。
ベトナム戦争前のアメリカもそうだった。
だから自分や自国が自分自身を、
省みる必要に迫られる事は、
決して悪い事ばかりではない。
人間と国は体力と金があり余るような、
若く分別の無い時代を脱して初めて、
成熟した本当の立国への道を歩む事が出来るのだ。
「日本人の半分はアメリカを支持していると思う、
でも半分は残念ながら支持していないと思う。」
そう答えると、
夫妻は半分意外そうな半分予期していたような、
そんな微妙な表情を見せた。
もちろんナギは基本的に支持している。
なぜなら民主主義とは「建前」だからだ。
中々実現の難しい民主主義の、
「建前」を共有する事で、
私達はそれに近付いて行けるからだ。
最初から「建前の無い国」であれば、
地下資源が見つかってから、
『尖閣諸島は自国のものだ。』と言えるし、
第二次世界大戦が終了してから、
『竹島は自国のものだ。』と突然、
攻め込む事も可能になってしまう。
大事なのは各国が「民主主義」という、
世界最大の「建前」をいかに共有するかだ。
「本音」は色々あるに決まっている。
建前を共有せずに本音をむき出し、
「アメリカすなわち悪」であるといった、
幼稚な論を大手を振ってまかり通させ、
原発への冷却剤注入を断り、
地震のみの被害を、
原発事故に変えてしまったという、
将来に対して償い切れない、
大災害を引き起こした事は記憶に新しい。
アメリカすなわち悪だって?
悪に決まっているだろう!
お互いはお互いの国とって悪である。
これが「当たり前」の大前提だ。
「人は人にとって狼である。」
と古来から言うではないか。
しかしお互いを貫く民主主義が、
自国のみの利益を超えて、
各国の行動を制限、抑制し、
利益の重なる部分において、
立場の強弱はあっても、
「建前」を盾として交渉を可能にするのだ。
だからナギは民主主義という、
「建前」を共有できる国、
アメリカを基本的に支持している。
「私たちはこれからお互いに、
回復して行かなくちゃならない。」
そう言うと夫妻はようやく、
安心したようだった。
ホテルまで送って頂き別れる時に、
夫人が改まった姿勢を作って手を握り、
「私たちはあなたをお迎えできて光栄でした。」
と言ってくれた。
「オー!
イッツ・マイ・オナー。
イッツ・マイ・プレジャー。」
私たちはニコッと笑いあい、
「シーユー・ネクスト・イヤー!」
とお互いに言って別れた。
さぁ次はフランス「サロン・ドートンヌ」だ。
○シカゴ・オヘア空港
○Chicago O'Hare International Airport
(つづく)
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オハイオ・パリ・ACDC・「2012年10月には」の、
オハイオ編は今日で終了です。
次回からのパリ編をお楽しみに!
次回は12月17日(月)に更新予定です。
では!
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