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2011アリゾナ奮闘記・第5話「荒野を横切る」 [旅(Travel)]

14・ハーレー・ママ・原寸・510.jpg

「ハーレー・ママ」とマシューが言った。

Matthew said, "Harley Mama."

○2011アリゾナ奮闘記・第5話「荒野を横切る」

ヘルメット無しのハーレー乗りが、
自分達の車を追い越していく。

周りはサボテンが林立する、
赤土の渓谷だ。

「ハーレー・ママ」、
後席に跨る女性を評して、
マシューが言う。

サボテン・サボテン・サボテン・・・
赤い砂、赤い土、赤い石。
こういうのを「荒野」と呼ぶのだろう。

鳥が飛んでいる。
「タカかなワシかな?」
「いやあれはレイブン(渡鴉(ワタリガラス))だ。」
2、3匹の群れが飛ぶ。

不機嫌なウェイトレスのいる、
ドライブ・スルーで食料を買い、
車は更に進んでいく。

2時間も走ると木が見えだす。
標高が少し上がったのだろう。

そこからひたすら車は登り出す。
標高は1000メーターを越えた。

4時間か5時間か、
時間の感覚が失われたころ、
グリアーに到着する。

完全な森林地帯だ。
標高2000メーター以上。

湖さえ併せ持つ、
巨大な別荘は、
馬が草を食んでいたり、
本当に素敵だ。

17・スペードランチ・510.jpg

美しい納屋とこの展覧会の企画者マシュー。

Beautiful Barn with Matthew who held the show.

一旦泊まる棟に荷物を置き、
早速「納屋(バーン)」に入って、
作品の飾り付けを開始する。

他の作家も次々に到着し、
「ナイス・トゥー・ミー・チュー!」
と言い交わしながら、
テキパキと作業は進んでいく。

それぞれ良い作品を持つ作家達だ。
全員展示にも手慣れている。
自前の「ついたて」をパタパタと組む。

26・Jonson Yazzie・510.jpg

ジョンソン・ヤジーとその作品。

Johnson Yazzie and his works.

「ナギはこの一角を全部使ったらいい。」
最奥の広い場所を示されるが、
困ったのは展示方法だ。

事前に、
「馬の柵を使えばいい。」
と聞いてはいて、
ハリガネで括れば何とかなるだろう・・・
と思っていたのだが。

実際は括りつけると、
画面は「下」を向いてしまう。
まるで枯れかけのヒマワリだ。
これには冷や汗が出た。

良い作品やシッカリした展示は、
他の作家にも歓迎される。
相乗効果で自作も良く見えたり、
良く売れたりするからだ。

悪い作品や汚い展示には、
この正反対の事が言える。

本気で売りに来ている他の作家に、
迷惑を掛ければ他国人だけに、
その怒りはより激しいだろう。

苦肉の策でハリガネの隙間を、
エア・キャップを丸めて加減すると、
何とか「ツラ」が正面を見た。

しかし作品数が作品数だけに、
角度の調整を含むと、
莫大な時間が要る。

「マシューちょっと手伝ってくれないか?」
「よし!」
と言う訳で2人して試行錯誤する。

ハリガネを強く縛ってみたり、
色々試す内に、
「テープを使えば良いんじゃないか?」
マシューが思い付き、
貼ってみるとこれが一番早い。

次々に貼り付けて展示を完成。
他の作家達も、
「グッド・プレゼンテーション」
と認めてくれた。

28・ナギと作品・510.jpg

ナギ(自分)と自作品。

Nagi(me) and my works.

惜しむらくは納屋の割り当て位置や、
柵とはどのようなもので、
高さ長さはどうなっているのか?
という事が事前には全く解らず、
計画ナシに即興になった事だ。

今年はしょうがない。
だが来年を考えて、
柵の高さ、長さ、構成を、
手帳に控えておく。

25・馬柵寸法720・510.jpg

馬柵(うませ)の寸法
The sizes of the horse rails.

ともあれ展示を終え、
宿泊用の山荘に帰る。
割り当てられた部屋も豪華だ。

18・山荘室内・510.JPG

山荘内部
The inside of the mountain villa.

夜食事をしてから、
もう9時過ぎだが、
山荘の周りを走る。

日本を発ってからバタバタと忙しく、
トレーニングの時間が取れなかった。
2日間鍛えない日が続いている。

3日連続は絶対に許されない。
1日目は通常の休息であり、
2日目はオマケだ。
だが3日目は衰退期の始まりだ。

食べたばかりで苦しいが、
ヒタスラ走る。
星空が驚くほど美しい。

息が切れたので、
いよいよナマケのツケが来たかと思ったが、
よく考えれば道理だ。

ここは2000メーターを楽々と超える、
高地に位置するのだ。
下手すれば酸欠になりかねない。

酸素不足の苦しみの中で、
輝度の高い星々が明滅する。

夜は死んだように眠り、
朝は午前4時に起きる。

今日はいよいよ展覧会の始まりだ!

(つづく)


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

明日は小磯記念美術館での講義、
「大下藤次郎と現代作家にまなぶ透明水彩」を、
行います。

ご予約された方は、
お忘れなくお越し頂ければ幸いです。
よろしくお願い致します。

次回のブログは、
10月3日(月)に更新します。

よろしくお願い致します。

では!
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コメント 4

ララアント

こんばんは。
「ハーレー・ママ」・・・ハーレーに跨る女性の背中
まさに「ハーレー・ママ」ですね!
標高2000メートルの所にある別荘
すばらしい景色ですね。。
こういう場所での展覧会 どのような展開になったのか
気になります。

ムべの実・・・アケビは落葉樹で山に入らないと
見つけにくいのですが ムベは常緑樹なので 最近は
生け垣によく使われています。
by ララアント (2011-09-30 21:12) 

カズノコ

「夜は死んだように眠る」、
これが一番いい!
素敵な夢は見なかったですか?


by カズノコ (2011-09-30 23:35) 

匁

現場作業が克明に書かれていて
迫力が有ります。
次回も楽しみにしています。

by (2011-10-02 09:02) 

岩崎ナギ

ララアントさん→おはようございます。
ある面で非常にアメリカらしい光景と思い、
撮影しました。
別荘近辺は本当に素晴らしい眺望で、
心が穏やかになるような、
自然に囲まれていました。
展覧会はまた次回の日記で載せますね。
いつもお読み頂きありがとうございます。

ムベについて教えて頂き、
ありがとうございます。
同じ仲間でも、
落葉するものと、
ずっと緑のものとが、
あるんですね。





カズノコさん→ありがとうございます。
やるべき事をやりきり、
思い残す事なく眠れれば、
それが1日の終わりとしては、
最良ですね。
夢は見たかも知れませんが、
憶えてはいません。






匁さん→「ここまで来て失敗か?」
とこの時は本当に焦りました。
中々文章では再現できない、
切羽詰まった心持ちでした。
結果的に何とかなりましたが、
紙一重だったと思います。
お読み頂きありがとうございます。
by 岩崎ナギ (2011-10-03 06:06) 

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