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展示が始まります「空飛ぶ男と歩く犬」日本の自然を描く展 [出品展覧会/My Exhibition]

「歩く犬(上野写真)」・完成・510.jpg

賞・第23回「日本の自然を描く展」・「優秀賞」
題・21世紀回顧録「空飛ぶ男と歩く犬」
技法・透明水彩
大きさ・H333×W530(ミリ)M10号
作者・岩崎ナギ

Prize / The 23rd "Describe Japanese Nature" Exhibition /
"Excellent Prize"
Title / The 21st century memoirs /
"Flying Man with Walking Dog"
Technique / Watercolor
Size / H13.32×W21.2(inch)
Artist / IWASAKI, Nagi

◎おはようございます。

今日8月15日(日)午前10時から、
上野の森美術館「日本の自然を描く展」において、
21世紀回顧録「空飛ぶ男と歩く犬」を、
展示して頂けます。

これは以前お伝えしました通り、
同自然展において、
おかげ様で「優秀賞」に入ったものです。

8月24日(火)までで、
期間中に休館日はありません。

無料招待券ございます。
ご希望の方は左サイドバー、
最下段のメールボックスから、
ご連絡頂ければお送りします。

すでに何名かの方にはお送りしましたが、
5枚まだ残っていますので、
ご遠慮なくよろしくお願い致します。

作品写真も同展のカメラマンの方に、
取り直して頂き、
画像データを有料ですが、
購入しました。
おかげで綺麗な画像になりました。

また前回の記事の予告どおり、
この絵の「挿話」を、
以下に掲載したいと思います。

かなり長いので、
お時間の許す方のみ、
お読み頂ければ幸いです。

では・・・

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「空飛ぶ男と歩く犬」
作・絵 岩崎ナギ

犬は海浜公園から出ないように、
注意深く歩いていた。

出ないようにしているのは、
飼い主が飛んでいるのを、
そこで待っているからだった。

犬の名前は「モモ」といった。
鈍くさい名前だけど、
別に今の飼い主が付けたのでもない。
モモは拾われた犬だったから。

モモは本州でない所に産まれた。
大きな橋を渡ってきたから、
たぶん四国だったのだろう。
もちろん犬だからそこまでは解らない。

気付くとダムの建設現場で、
飼うとも言えない放置のされ方で、
いつの間にか飼われていた。

そんな放ったらかしの犬が、
現場現々で数匹ずつ居たから、
その内の一匹から産まれたのだろう。
ただその記憶は幼すぎて無かった。

放ったらかしとは言っても、
誰かしらご飯は出してくれたから、
不幸だとまでは言えなかった。
大体、不幸と幸福の、
ちょうど中間くらいだったろう。

いじめる者もいなかったし、
昼ご飯の時には誰かが相手して、
気を紛らわせてくれていた。

3ヶ月くらい経った頃だろうか、
現場が妙にザワザワして、
車に何やかやと積み込み始めた。

モモには解らなかったが、
ダムの設計ミスが発見され、
電話やメールのやり取りだけでは、
埒(らち)があかなくなり、
担当者が大阪本社まで行き、
善後策を講じる事になったのだ。

毎日判で押したように、
決まった事しか起こらない現場での、
珍しい「てんやわんや」が、
モモには余りにも面白そうで、
乗せて行ってもらうべく、
担当者にしつこくまとわりついた。

担当者も面倒くさくなったのだろう、
そのままモモを荷物席に載せ、
バンは出発した。

本社での実際の話し合いは、
驚くほど短時間で済んだ。

本社側が予め解決策を協議しており、
その数案の中から、
担当者の実見、実感を踏まえ、
最も適切な案が選択された。

手際よい対応に時間的余裕が出て、
担当者は寄り道しながら帰路に就いた。

大阪で大量の食料品を、
おみやげとして買った担当者は、
芦屋市打出浜で車を停め、
そこでモモを捨てた。

特筆する理由もないだろう。

元々飼っているかいないか、
解らないような犬だったし、
個人の飼い犬でもないから、
荷物の置き場所を作るために、
簡潔に捨てられたようだ。

それでも幾らかは気が咎めたと見えて、
「この犬はモモです」と書いた、
現場用の板きれを首からぶら下げ、
お情け程度の食料を前に置き、
電柱につないで走り去った。

2日ほど経ち、
食料も水も拾ってくれる人もなく、
弱り果てて鳴いている時に、
今の飼い主が通りかかった。

男性は思わず連れ帰ってしまった。
そうしない訳にはいけない理由が、
その男性にはあった。

小学生の頃の彼には、
親に自分が世話をすると、
固く約束して飼ってもらった犬がいた。

最初の内は約束は守られていたが、
サッカー少年でもあった彼は、
放課後はサッカーの練習があり、
終われば眠くてご飯を食べるとすぐ睡眠、
朝は遅刻ギリギリまで寝ていて、
慌てて飛び起き学校へ、
という毎日だった。

親は約束どおり、
一切世話をしなかった。
「しつけ」という事だったのだろう。

少年も犬が気になってはいたのだが、
『いざとなれば誰かが世話をするだろう・・・』
と、ついつい面倒くさくなって、
3日ほど餌をやらない日が続いていた。

その3日目の朝、
弱り切って鳴いている姿が、
目の端に入ったが、
相変わらず遅刻寸前だったので、
『帰ったら餌をやろう・・・』
と思いつつ学校まで走っていった。

帰ってきた時には犬は死んでいた。
何となくゴロンと転がって、
冷たく固まり息もない。

3日食べないくらいで、
死ぬことがあるのだろうか?
それはもちろんある。

どんなものでも死ぬ時には、
アッ気に取られるぐらい、
簡単に死ぬのだ。

そんな法則に気付いたところで、
事態とは何の関係もなく、
元にも戻らない。

もちろん犬一匹で、
人の全てが変わりはしない。
あるいは人格形成が、
一つの要因によってのみ、
成される事は無い。

それでも少年は長じるにつれ、
サッカー少年から、
内省的な理数系の青年へと変化したし、
犬の事が全く影響しなかったとまでは、
言い切れないだろう。

今はCADで機械設計をしていて、
そんな事があったことさえ、
すっかり忘れていたのだが、
弱り切った犬を見た瞬間、
固く閉じておいた記憶の扉が開き、
ゴロンと転がっていた犬の姿が、
脳裏を焼いた。

『今度こそ!』
決意をして拾い、
育てる事にした。

今回はまず朝5時半に起きて、
散歩に行って餌をやり、
それから出勤する事にした。

ある事を解決しきる事は、
別の事での解決力を、
高める事にもつながる。

早めに出勤する事で、
仕事にも何となく、
余裕が出来たようだ。

自分は特段恵まれているとも、
思わない。

思わないが、
世間が世知辛くなり、
無理な残業をさせられたり、
その残業代も出ないのが、
当たり前となっている世の中では、
芦屋という土地柄のおかげなのか、
ほぼ定時に帰れるだけでも、
十分恵まれていると言えなくも無かった。

ごく近所の勤務先から、
6時くらいに帰ってくると、
まだ光の残る打出浜に、
よく散歩に行った。

ただぼーーーっと、
海を眺めていたりする。
モモは適当に海岸を走っている。
内海だから強い波が来る事もない。

それでもよく見ていると、
小さな波は必ずあるし、
魚も時々跳ねる。

『どんな平穏に見える人生にも、
様々な波は隠されているんだな。』

何となく自然に納得できた。

どんな波であれ、
来る波の一つ一ゝを、
人生における一つの機会、
ある意味においては幸せだと、
感じる事が出来ないならば。

海全体がつまり人生全体が、
100倍の大きさと、
その時間を持っていても、
幸せを感ずる事は難しい。

『自分が砂浜に座っている事そのものが、
つまり幸せの波なんだ。』

遠くを犬が走るのを見ながら思う。

休日には時々パラグライダーもした。
男性が上空で風を切るのを、
モモは地上を歩きながら、
海浜公園から出る事なく待っていた。

公園の出口が見えても、
特に出て行こうとも思わない。

幸福とはどの程度のものか、
試すような類のものではない。
モモはそれを経験で学んでいた。

まだ地面の中に埋まり、
これから芽吹いてくる草花は、
独特の匂いがして、
飽きる事なく嗅ぎ回った。

小さな波の音がする。
船のワイヤーがチリチリと鳴り、
パラグライダーの風切り音もある。

モモの鋭敏な耳には、
その全てが聴き分けられた。

遠くで入道雲が出来て、
雨滴でふくらむ音が聴こえる。
ただ音と匂いからして、
雨が降るのはもう少し先だ。

翼の音が少しずつ近づいてくる。
もうすぐ着陸するのだろう。
そうして家に帰るのだ。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

・・・でした。

いかがでしたか?
ご感想をお聴かせ頂ければ幸いです。

ユウユウさんに、
絵本化して頂きたい感じです。
言葉さえ子供の解る言葉にすれば、
内容としてはそんなに難しくないし、
子供がどう思うか訊ねてみたいです。

以前にもお伝えしましたが、
芦屋市打出浜には、
何度も出かけて、
寒暑の中、
写生に励みました。

当時『これは良いトコ行くンちゃう?』
と応援して下さった、
通りがかりの皆さん、
ありがとうございました。

犬の写真をお貸し下さった、
絵の上手いまことさん、
ありがとうございました。
「モモ」の名前はそのまま使いました。
『どんくさい』は物語上の設定で、
実際とは関係ありません。
悪しからずご理解頂ければ幸いです。

飛ぶ男の写真をお貸し下さった、
写真の上手いまことさん、
ありがとうございました。
発想の源ともなりました。

いつもブログを、
ご覧頂いている皆さん、
ありがとうございます。
やはり発表する事で、
張り合いが出ていると思います。

ナギは絵と物語を、
同時に作っていきます。

絵が物語を引っ張る時もあるし、
その逆もあります。

細かく詰めて考えるほど、
絵にして行きやすいように感じます。

次回は8月20日(金)に、
西区民センターの、
デッサン指導案を掲載します。

今日はお盆ですので、
電車でお墓参りに行ってきます。

では!
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ritton2

おはようございます。モモの話を読んでから再度絵を観ると更に味がありますなぁ(*^-')b。いつもながら素晴らしい作品だと思います(-ω☆)キラリ
by ritton2 (2010-08-15 08:51) 

にゃんぷ

tantanより☆

素敵な絵ですね☆
でも、タンタンはスイカの絵も好きでした

今年まだたべてない〜
by にゃんぷ (2010-08-15 16:41) 

桜貝の想い出

なるほど、素敵な物語が有ったんですね。
読んでから再度絵を拝見して隅々までじーっと見入ってしまいました。
良いですね~。
絵に優しさがにじみ出ているように感じます。
好きな絵と物語です。(^-^)/
by 桜貝の想い出 (2010-08-15 18:52) 

瓶太郎

こんばんは♪
by 瓶太郎 (2010-08-15 19:19) 

tromboneimai

物語読ませていただきましたよ。
読んだ後に絵を拝見すると、更にイマジネーションが
広がりますね。
いつまでもモモが幸せであることを願っています^^

挿画のデータを有料で作者ご自身も買うのですねぇ。
by tromboneimai (2010-08-15 21:49) 

ちぐぼん

物語、素敵でした。。。
読ませていただいてから作品を再度拝見すると、男性やモモに対する思いが出て、また違った作品を拝見しているような気分になりました。
ナギさんの作品に対する思いが伝わってきます。
とっても勉強になりました!ありがとうございます。
by ちぐぼん (2010-08-16 14:20) 

広島ピアノ

大変ご無沙汰しています。
コメント頂いていたにもかかわらず、失礼致しました。
絵はもちろん、こんな文才まで見せ付けられたら・・・。
ブログ辞めようかな(笑)。
冗談ですが。
すばらしいです。
by 広島ピアノ (2010-08-17 19:23) 

匁

上野の森美術館で拝見させていただきました。
感想をUPしました。
by (2010-08-19 07:45) 

ぶぅ

絵が完成したんですね!
そして優秀賞!!! おめでとうございます。

物語とあわせてみると、自分が想像していたわんこと違っていて
ビックリ。

出来上がった作品をみて、わんこのモサモサっとした感じが
またいいですね。

う~ん、さわりたい。。。
by ぶぅ (2010-08-20 01:24) 

岩崎ナギ

ritton2さん→おはようございます。
お読み頂けたんですね、
ありがとうございます。
絵も挿話も気に入って頂けたようで、
嬉しいです。
またよろしくお願い致します。




にゃんぷさん→スイカの絵も、
ご覧頂いたんですね。
両方気に入って頂いたようで、
ありがとうございます。

スイカ頂きでもしない限り、
中々食べそうで食べないですよねー。。。





桜貝の想い出さん→長文をお読み頂き、
ありがとうございます。
何の先入観も持たずに、
絵をご覧頂けるのも良い事ですが、
やはり背景を知って頂く事で、
より深い観点を持って頂けると思います。
絵を気に入って頂けて嬉しいです。




瓶太郎さん→おはようございます。
またお越し頂いて、
ありがとうございます。




tromboneimaiさん→長文をお読み頂き、
ありがとうございます。
絵は物語も含めて、
色々な手段で情報をお伝えする事で、
より豊かに解釈して頂けると思います。
一度何かしらが失われても、
何度でも幸せを求めあるいは感じて、
頑張りたいですね。

応募者が多いですからねー。
ともあれ募集側が、
決して損をしない、
しっかりとした仕組みです。




ちぐぼんさん→物語もお読み頂き、
ありがとうございます。
物語を読まない段階の、
理解も貴重なものですが、
絵の要素の関係性を理解した上で、
ご覧頂けるのが、
深まりがあってより良いと思います。
こちらこそ、ちぐぼんさんの作品は、
いつも参考にさせて頂いています。
ありがとうございます。




広島ピアノさん→ご無沙汰しておりました。
挿話もきちんとお読み頂いて、
ありがとうございます。
作品は絵だけご覧頂けるのも、
大変嬉しいことですが、
逸話をお読み頂く事で、
また違った角度からの視点を、
持って頂けてより嬉しいです。
また気に入って頂けたようで良かったです。
ナギは才能を信じておらず、
それは努力で代用できるものと、
固く信じて行動したいです。




匁さん→実際にお出かけ頂いたのですね。
ありがとうございます。
ぜひブログの記事拝見させて頂きます。
よろしくお願い致します。




ぶぅさん→おかげ様で、
完成、入賞できました。
ありがとうございます。

見る人の数だけ物語がある(笑)。
それはそれで良いですね。
どんな「想像」だったのか、
ぜひお聴かせ下さいね。

もさもさ感は増しましたね。
描いて行くにつれて(笑)。

通りすがりの方が、
たまたま実際に公園にいる犬を指して、
『この犬描いたの?
よう似てる!』
とおっしゃってました(笑)。。。
誰もが知っているという共感覚を目指して、
もうちょっと頑張ります。
by 岩崎ナギ (2010-08-20 05:20) 

ユウユウ

訪問が遅れましてすみません。
一枚の絵にこんなに奥深い物語が隠されていたのですね。
素晴らしいです。

絵本化…なんて嬉しいです!
私が描くと、ナギさんの絵のイメージを壊してしまいそうです~。
ナギさんが、絵本をつくったらどうでしょう!?
文章をそぎ落とし、わかりやすくして…
私も見よう見まねで絵本作ってるので、アドバイスできる立場じゃないですけど。
きっと素敵な本が出来そうです!!
by ユウユウ (2010-09-03 17:00) 

岩崎ナギ

ユウユウさん→いえいえお越し頂き、
ありがとうございます。
物語を深めていくのと、
絵を詰めていくのとは、
同時に行っています。

ユウユウさんの独特の温かみのある、
絵本になったらどうなるのか、
見てみたいですねー。
文章は削いで行かなきゃ、
行けないんですね。
しかも解りやすく。
とても難しそうです。。。
by 岩崎ナギ (2010-09-08 07:44) 

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