着彩完成「コマツシマ・スター号」 [風景画(Landscape)]
21世紀回顧録
「コマツシマ・スター号」
(川崎造船・神戸工場)/水彩版
The 21st century memoirs
"KOMATSUSHIMA STAR"
(Kawasaki Shipbuilding corp. / Kobe Shipyard) / Watercolor Version
「コマツシマ・スター号」、
着彩完成しました。
海は最後に実際に見に行きましたね。
それで少し自然な感じになりました。
でも外で描くって言うのは辛いです。
ジリッと照りつける日射し。
服の中を汗が流れ、
仕舞いに痒(かゆ)くなってくる。
これは地獄です。
人前だから掻(か)くに掻けない。
陽光は照りまさるばかり。
苦しみ抜いて描き上げましたよ。
中景の女性はFAYさんの写真、
「NightBird」からポーズをお借りしました。
FAYさん、いつもありがとうございます。
以下、この絵にまつわる物語を、
創作で考えてみましたので、
お時間のある方はお読みになってくださいね(↓)。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
青年は赤塚山の神戸大学寮を、
授業よりも3時間も前に出て、
海を見に行った。
海を見るのは元から好きだった。
海を見ながらAに付いて考えていると、
海はAに付いての何かを表しているし、
Bについて思っている時にはBについて、
CならCへの何らかの示唆を与えてくれる。
海にはそういう性質があった。
あるいは海自体は中立で、
プロタゴラスが言うように、
「人間が万物の尺度で」あり、
結局は自分が一度自分を突き放して、
見つめ直し再発見したのかも知れない。
いずれにしても海を見るのは良いものだ。
青年はもちろん海を見た事はあった。
城崎出身だから同じ兵庫県でもあり、
志賀直哉が小説に書くほど、
昔からの観光地でもあったから、
生活に不便を感じる僻地ではなかった。
ただ巨大船舶が停泊しているのは、
4月に入学したばかりでもあり、
やはりまだ珍しく感じられたのだ。
神戸大学は国立の大学だったから、
少なくとも兵庫県においては、
「よく勉強したね。」
と言われるような大学だったし、
青年もそれなり以上に勉強してきた。
実際に入学してみると、
「よくこれで受かったな。」
と思うほど勉強しない学生が、
多いのには驚かされたが、
青年は「ひとはひと」、
と思っていたので、
それもさして気にはならなかった。
実験設備が意外と古いのにも、
少しはガッカリしたが、
何しろ授業料が安いので、
文句を言えた筋合いでもないだろう。
おかげで乏しいバイト料も、
遠慮なくバイク関係や、
ガソリン代に回す事が出来た。
このヘルメットも「クラブマン」に、
載っていた広告ページのURLから、
注文したイギリス製のお気に入りで、
「アラビアのロレンス」が、
用済みになって事故死させられた時、
かぶっていたような古典的な奴だ。
青年の個人的な感想を言うなら、
布関係はイタリアの方が良いが、
皮関係はイギリスのが良い気がする。
そんなことをボーッと考えながら、
海と船を見ていると、
朝帰りらしい女の子が、
オペラレッドの携帯をかけながら、
すこし疲れ気味で歩いていった。
ブーツなので木の遊歩道では、
「ポカン、しゅー、トッ!」
というような音がする。
「しゅー」が混じるのは、
疲れているのと生活態度とで、
少し足を引きずるからだろう。
ともあれ青年は決して敵意を持って、
女の子を見たのではなかったし、
むしろ朝の光の中では、
『頑張れよ。』
とも思ってしまった。
自分は世界を分断するために、
生きているんじゃないんだ。
そろそろ授業に出る頃合いだった。
バイク通学について近隣の住人から、
苦情が寄せられている事もあり、
無茶苦茶に急いで行くのは、
避けるべきだった。
ところで船はパナマに行くらしい。
『へーパナマ。』
青年は日本史専攻だったから
(もちろん畿内説)、
パナマ帽とかパナマ運河とかその返還とか、
パナマについては、
ごく一般的な理解しか持っていなかった。
『どんな所だろう?』
アンテナが回り始めている。
出航が近いのだ。
青年はハンドルを左に回し、
鶴甲(つるかぶと)方面に、
進路を取った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・・・でした。
ではまた明日!
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お話、◎です。
by カズノコ (2009-06-16 14:40)
カズノコさん→そうですか、
長ーいお話までお読みいただいて、
ありがとうございます。
気に入って頂けて良かったです。
by 岩崎ナギ (2009-06-17 05:27)