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オハイオ・パリ・ACDC・「2012年10月には」・9話 [旅(Travel)]

019・ジェロームの家「出発の朝」・510.jpg

Nagi in front of Jerome & Nathalie's apartment
○ジェロームとナタリーのアパルトマン前のナギ

オハイオ・パリ・ACDC・「2012年10月には」
9話「ジェロームとナタリー」

◎パリ帰国の翌日は、
ACDCでのプレゼンテーションの日。

その原稿を往復の飛行機の中で、
必死に書く必要があった。

〆切を落とす強い恐怖感が、
狭い機内でも集中を維持させていた。
むしろ選択肢が限られる分、
却って集中できた程だった。

ただ目下のところ困っているのは、
シャルル・ド・ゴール空港に通ずる改札が、
唯一持っている切符で開かない事。

この改札を通過できなければ、
日本に帰る事も出来ない。

何故開かないのか?
それは自分の切符が2日通し券で、
「空港駅」では降りられない券だからだ。

駅の看板に絵入りで描いてあるから、
まず間違いなくそういう原因だろう。

日本ならこういう場合、
機械なり駅員さんなりで、
乗越料金を精算すれば良いが、
そのどちらもこの駅では見当たらない。

元の駅に戻るのは飛行機の時間上、
もう難しいだろう。

どうしてこうなったのか?
パリで最後に会ったFBの友人、
ノエミに電車でも行けると聞いたからだ。

シルビーはバスが出ているから、
オペラ座前から乗ると良いと言った。

しかし後から聞いた「電車案」の方が、
バス代を節約できるし、
地下鉄からバスに乗り換える手間も減る・・・

・・・そう思ったのだが現実は甘くなかった。
だいたい同一料金で行けるのなら、
そもそもバスの存在意義は無いんじゃないか?
・・・人間が真実に気付く時それはいつも遅すぎる。

昨日はジェロームとナタリーのアパルトマンに、
シルビーの紹介で泊めてもらった。

全くの初対面で話した事も無かったが、
二人とも本当に親切に接してくれた。

特にナタリーは優しかった。
黒人で鼻ピアスをしており、
容色が特に優れている訳でもないが、
長髪でハンサムなジェロームが、
付き合っているのも素直に納得できた。

019・ジェロームの家「ジェロームとナギ(目つぶり)」・510.jpg

○ナギとジェローム
○Nagi & Jerome

019・ジェロームの家「ナタリーとナギ」・510.jpg

○ナギとナタリー
○Nagi & Nathalie

ササッと野菜炒めを作り始める。
とても自然な感じで嫌味がない。

部屋はロック・フェスティバルの写真や、
中指を突き立てるジェロームの写真がある。
ドラムもある所を見ると、
バンドを組んでいたのだろう。
窓の外はパリ郊外の夜の街並みだ。

019・ジェロームの家「窓から外」・510.jpg

○窓からの眺め
○The view from the window.

ゴハンが出来るとこの部屋で食べる。
食卓を囲んで喋りながら食べる。
日本人ときて大体訊ねられるのは・・・
"Do you like MANGA?"

「イエス、アイ・ライク・マンガ.」・・・
確かに好きか嫌いかで言えば、
好きだけれどそればかり訊ねられるのは、
日本が世界に発信している情報の、
偏りと貧しさの表れではないか?

ともあれ「マンガ」の話題。
ジェロームが好きなのは「アキラ」。
80年代の体型80年代の言葉80年代の恐怖。
たとえ未来を描いたとしても、
誰も同時代から逃げ切る事は出来ない。

「あなたはどんな絵を描いているの?」
自作「KFR」が印刷されたハガキに、
「For Jerome. For Nathalie.」と、
それぞれ記してプレゼントする。
「オー・メルシー・ボーク-!」

ナタリーの質問は止まらないが、
ナギはオハイオからの肺炎の回復期で、
また転がるように逆戻りするか、
そのまま回復して行けるかの、
「峠」に立っていた。

「・・・シャワーを使って良いですか?」
「あぁもちろんどうぞ!」

それから二人はパタパタと片付けてくれて、
今まで「ソファー」だった椅子は伸ばされ、
「ベッド」に早変わりする。
ナタリーはタオルも手渡してくれる。

シャワーを浴び二人に「おやすみ」と言って、
ベッドに入る。
本当に長い一日だった。

今朝はまだパリから100キロ離れた、
シルビーの家にいたのだ。
ピュイゾー、オルセー、ジョージV、
サロン・ドートンヌ、兵士の式典、ジェロームとナタリー・・・

次の日は朝4時に起き、
二人を起こさないよう注意しながら、
片足スクワットを50回ずつして、
ヒゲを剃り絵を描く。

朝7時にジェロームがノックする。
「ナギ、用意は出来ているか?」
「イエス!」
準備万端だ。

「クッキーやコーヒーが必要か?」
「ジャスト・コーヒー.」

二人でコーヒーを飲む。
「よし行こう!」ジェロームが言う。
長髪ながらスーツにタイで、
チャラけた所は既に微塵も無い。

ナタリーがアパルトマン前で、
写真を撮って欲しいかどうかを訊く。
本当に細かく人の気持ちを察するのだ。

その後3人は車に乗り込み、
パリの中心部へとハンドルを切った。

020・パリへ「車中」・01・510.jpg

○パリへ!
○To Paris!

(つづく)

++++++++++++++++++++

昨日まで知らなかったのに、
今日は助けてくれる。
世界中に助けてくれる人がいる。
苦しみの中にも歩き続けられる理由です。

更新が遅れて済みませんでした。
次回は2月4日(月)に更新予定です。

では!
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