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2010・ニューヨーク奮闘記・07「ステイ・クール!」 [旅(Travel)]

1日目・「雪のアゴラ」01.jpg

最高気温1℃、最低気温-5℃、アゴラギャラリー前。
Best temperature 33.8゚F,
minimum temperature 23 ゚F,
in front of Agora Gallery.

008・「絵を超える愛は、25番通りで。・10号P版.jpg

習作08・21世紀回顧録「絵を超える愛は、25番通りで。」
作者・岩崎ナギ
8st study of 21th Century Memories
" Love Beyond Picture At the 25th Street"
Artist / IWASAKI, Nagi

06話からつづく)

雪はひたすら降り続いている。

思わず「止そうか?」
と怯(ひる)む降り方だ。

気温は最高で1℃、最低が-5℃。

しかし、
「日本人はやると言っておいて、
実際はやらない。」

・・・と軽侮を買うのだけは、
死んでもゴメンだ。

「志士は溝壑(こうがく)にあるを忘れず。」
(志(こころざし)のある人間は溝で転がって、
死ぬような事態も覚悟しておくべきだ。)

腹を括(くく)って描く。

イーゼル(画架)を立て、
歩道の端に立ち、
黒い傘を差して描く。

やはり実際に見て描くと違う。

日本で先行して描いていた時は、
ストリートビュー(グーグル)」を、
参考にして描いていた。

「ストリートビュー」は良く出来ていて、
360°見られるようになっている。

なってはいるが基本的に写真を、
複数つなぎ合わせて出来ているので、
不鮮明な箇所、隠れている箇所が、
多数ある。

だから写真では見えない所を、
少なくとも一度は、
実見する必要がある。

「成る程、こうなっていたのか!」
歯の抜けた櫛(くし)で、
髪をとくような、
もどかしい思いで描いていた絵の、
失われた歯が埋まっていく。

もちろん恣意(しい)的に、
彎曲(わんきょく)させて、
描いてはいるが、
それでも「元」が有るのと、
無いのとでは大違いだ。

描いていると実に様々な人に、
声を掛けられる。

「とっても良いわ!」
「実はそこのギャラリーで、
今展示しているんですよ。」
「あら!じゃあ行ってくるわね。」

その女性3人組が見に行ってくれたので、
アンジェラとサブリナが窓から手を振り、
「そこにいなさい、
ビデオを撮るから!」
と言ってくれる。

キアーラが紫のパーカで出てきて、
制作風景を撮ってくれる。

キアーラはイタリア出身だから、
服の色づかいが、
ニューヨーカーと違って洒脱だ。

近くで火事があったらしく、
消防車が出入りしていたが、
その仕事帰りの消防士が、
消防服のままで話しかけてくれる。

「よぉーいつから描いてんだい?」
「2時間くらい前からですね。」
「よくやるねー、
俺にはとっても出来ないね!」

火の中をくぐり抜けて来て、
ナイス・ジョークだ。

「ごらん彼の描いている建物は、
みーんな彎曲しているよ。」
「What a funny (picture)!
(まー何てへんちくりん!)」

すぐ真後ろで言うのは止しましょう。

アンジェラは「リリーグッド!」
(本当に良いわ!)
と誉めてくれた。

そんな風に一日描いては帰り、
また次の日来ては描く・・・
を2月26日から3月4日まで、
ひたすら繰り返した。

2日目からは地下鉄にも乗った。
1週間券を買いどこにでも行った。

ニューヨーク市民は驚くほど親切で、
地下鉄で路線を訊くと(非常に複雑)、
ほぼ100%知ってる限りを教えてくれた。

白人はしゃべる速度が速すぎ、
黒人は訛りが強すぎるが、
それでも何とか理解できた。
(黒人はスパイク・リーみたいなしゃべり方)

唯一無視したのは、
同朋であるべき東洋人、
と言うより日系人、
もしくは日本から来た、
サラリーマンだけだった。

本当にその一人だけ無視され、
後は100%丁寧だった。

あるひげ面の黒人のおじさんなどは、
「そうさな、この線路から出るよ。」
と教えてくれた後、
自分の列車が出る前に、
わざわざ戻ってきて肩を叩き、
『グッ!』とガッツポーズをして、
『頑張りな!』という意を表した。

雪は2日目から止んだが、
いずれにしても寒い。
ひたすら描き進める。

「おれ実は美術好きなんだよー!」
って言う学生が、
「描いてるとこ写真撮らせてくれない?」
って訊いてきたりした。
もちろんOK!

「サー(先生)!
その絵は売っているんでありますか?
私は誰それであります。」
と言って握手を求めるおじさん。

「ええ売ってますよ。
そこのギャラリーで展示しております。」
「そのサイズでお幾らくらいですか?」
「1500ドルくらいです。」
「エキザックリー?(本当ですか?)」

高すぎて怯んだようだ。
それでも丁重に挨拶してから、
去って行った。

別のアラブ系と見られる人が寄ってきて、

「どこから来られたんですか?」
「日本です。」
「ワタシ、ニホンゴ、ハナセマス。」
「オーリリー!(えー本当に!)
どうして日本語が話せるんですか?」

「ワタシ、ニホンジン。」
いやどう見ても・・・
「ニホンデ、ウマレマシタ。」
「あーそうだったですか。」

その方もディロン・ギャラリーで、
展示するから見てくれ、
と言われたがその日はもう帰っている。
「またいつか!」

その他にも多くの人に話しかけられた。

毎日ギャラリーに顔を出しては、
寒風吹きすさぶ路上で描く。

何が正しいか判らない。
これが将来に繋がるかは判らない。
それでも描く。

むかし誰かから、
「神は流された涙の数を数え給う。」
と聞いた。

宗教心とは無縁のナギだが、
苦しい時この話を時々思い出す。

それはどんな風に数えるのだろうか?
よく道端で通行人をカウンターで数えている。
あんな風に?まさか!
だって神なんだから。

きっと一粒一々数えているんだよ。
すくい取るみたいにさ。
でもそんな事は人は気にせず、
ただ出来る最善を尽くすべきなんだ。

「オンリー・ゴッド・ノーズ!」
(神のみぞ知る!)

ある時いかにもラップの好きそうな、
黒人がチャリ(自転車)でやって来て、
何も言わず後に陣取り、
ジィーッと絵を描くのを見ている。

ナギの絵は古典的な技法だが、
新旧の様々な影響を受けて、
自身の作風を構成しており、
グラフィティ」もその一つだ。

だからその分野に詳しそうな黒人に、
「グラフィティ」
の要素を持つこの作品が、
どう見えているのかは、
興味ある問題だ。

「ハイ!
絵を見るのが好きなの?」
「・・・(ひと呼吸の間)クール!(格好良い!)
マジで格好良いよ!
すげえ良いぜ。」
「リリー?」
「ヤー。」

良かった良かった、
ちょっと心配だったんだよ。

「ステイ・クール!」
(格好良いままで居なよ!)
そう言ってラッパーは去っていった。

天知る、地知る、我知る、人知る。
誰かは数えているかもな。

さあ明日は「パーティ」の日だっ!

(つづく)

※明日はパン屋さんの早朝労働がありますので、
ブログは一日お休みします。

また火曜日にお会いしましょう。
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tromboneimai

僕がNYをたった直後から大雪になったとは聞いていましたが、
こんな状態になっていたんですね。それでも初志貫徹とは凄い。
Googleのストリートビューで事前に書いていく、というのも驚きました。
確かにストリートビューは驚くほど町のイメージがわかりますものね。
行きかう様々な街の人々との素敵な出会いがあったみたいですね。
この習作はいずれ完成された作品に仕上がっていくのでしょうが
とても楽しみです。
by tromboneimai (2010-03-21 10:03) 

の

湿って重そうな雪です
降っているようですがこの中で描くに紙、濡れませんか☜(・・;)。。。
それにしても市民の方、親切ですね~♪
無視されたのが日系とは~(T_T)wwww
by (2010-03-21 10:40) 

yukio

ご訪問&niceありがとうございます!
お体気をつけて
どうぞ良いことありますように!
by yukio (2010-03-21 13:00) 

カズノコ

「25番通りで」の確認作業だったんですね!
会話の話が、とってもおもしろいですね!
実際の景観を見て、絵の構図が変わって来ることも
ありますね!~また、仕上がりをたのしみにしています!
by カズノコ (2010-03-21 16:10) 

匁

寒い雪の中のデッサンですか?!
こりゃあまたたいへんです。
どんなことになるか?
by (2010-03-21 19:04) 

マっこ☆

よかった~。NY市民にも親切な方もおられるのですね。
最初のタクシー事件から考えると、みんな悪い人イメージ
が芽生えていたもので…。雪の中のデッサンされていたの
ですか!?まるで修行僧みたいですね(笑)あまり無茶な
ことはされぬようにお願いします…でも仕上がりはどんな
ものか楽しみです♪
by マっこ☆ (2010-03-22 12:28) 

toki

ニューヨークは寒そうですね。(振)

by toki (2010-03-23 07:28) 

岩崎ナギ

tromboneimaiさん→1日違いで助かりましたね。
ひょっとしたら飛行機だって、
飛ばなかった可能性もありますよ(笑)。
「やると言ったらやる。」
これはとても大切な事ですもんね。
ありがとうございます。
ストリートビューは写真の撮影場所を、
決めるのにも役立つかも知れません。
NY市民との交流は、
面白い事が多かったです。
この習作も長期間かけて、
完成させます。
気長にご覧頂ければ幸いです。
よろしくお願い致します。
by 岩崎ナギ (2010-03-23 09:37) 

岩崎ナギ

のさん→傘は差しましたが、
どうしても少し濡れて、
鉛筆がちょっと滲みました。
NY市民の方々には、
おかげ様で親切にして頂きました。
東京のサラリーマンの方が、
(一般的に言って)冷たい印象です。
とりあえず道を訊いて無視される事が、
東京では多いです。
by 岩崎ナギ (2010-03-23 09:37) 

岩崎ナギ

yukioさん→こちらこそコメント頂き、
ありがとうございます。
またよろしくお願い致します。
by 岩崎ナギ (2010-03-23 09:37) 

岩崎ナギ

カズノコさん→そうですね、
やはり実景を見ないと弱いですから。。。
NY市民との会話は、
楽しめる事が多かったです。
実景を見た事によって、
絵に「芯」が通りました。
ありがとうございます。
by 岩崎ナギ (2010-03-23 09:38) 

岩崎ナギ

匁さん→中々に大変でしたが、
今ではもう良い想い出です。
完成には時間が掛かりますが、
気長にご覧頂ければ幸いです。
よろしくお願い致します。
by 岩崎ナギ (2010-03-23 09:38) 

岩崎ナギ

マっこ☆さん→そうですね、
ボッタクリ・タクシーはむしろ例外で、
NYでは市民の優しさを感じる事の方が、
多かったと思います。
そうですね(笑)、
無理は禁物です。
出来上がりは大分先なので、
気長にお待ち頂ければ幸いです。
よろしくお願い致します。
by 岩崎ナギ (2010-03-23 09:38) 

岩崎ナギ

tokiさん→そうですね(笑)、
おかげ様で無事帰って参りました。
ありがとうございます。
by 岩崎ナギ (2010-03-23 09:39) 

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